ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書 を読みました。(ちなみに電子書籍はソニーのReaderを使っています) 個人ごとになるんだけど著者の斉藤さんが経営されている looopsさんは...
選択と集中
選択と集中ということばがある。実際にやろうとするととても難しい。その理由は、すでにある事業をどう整理するかにもたつくから。選択するということは「やらないことを決める」ことなんだけど、多くが「これもやりつつ、『こっちにも取り組む』」という選択をしてしまう。イヤ、それは「集中」じゃなくて「分散」じゃないか。
このことは
我は専にして一となり、敵は分かれて十となれば、これ十を以ってその一を攻むるなり
と孫子にも書かれているんだけど、とにかく経営資源は分散させないで力を集中して「戦力」を展開することで、市場シェアを獲得していくのが、小さな組織の基本的な方針だと思う。

が、往々にして商品点数を増やしていくことで、収益ポイントを増やすことに行動してしまうことのほうが多いんじゃないかな。選択と集中について議論するときは、シチュエーションとしては「このままだとジリ貧だよね」とか「なかなか収益が上がらないのをどう変えていこうか」といった状態になっていることが多いはずです。
すると、打ち合わせでは
- いまある事業(サービス)をどうするか
- あらたな選択先と集中先をどこに定めるか
が議題になることが多いんじゃないですかね。外野からみていれば、自分たちの不得意な分野はすてて、得意な分野(=つよみ)に特化して、集中していけばいいじゃない。と簡単に思うんだけど、さまざまな事情によってこれがやりにくい組織が多いんだろうね。
で、この手の話をしていると、次にでてくるのが「選択と集中」をしたところで、果たして勝てるのか?という疑問(というか質問)ですね。不安があるがゆえに、リスクマネジメントとして「これもやりつつ、『こっちにも取り組む』」という選択をしてしまうという気持ちもすごくわかる。
「勝てるのか?」という疑問にたいして「勝てます」なんて答えがあるはずもないんです。勝つためには、
といったような差別化をまず理解して、明示化していかなきゃいけない。これを明示化していくと徐々に
といったような、組織マネジメント・組織力をどうつけていくかという発想になります。だから戦略がかわると組織が変わるし、組織は戦略に従うといわれるわけです。もっといえば、こうした「勝つための環境」を以下に整えていくのかが「戦略」なんだろうと思うのです。何しろ組織をつくるのは一朝一夕にできるものじゃあない。だからこそ戦略が重要なわけで。

とはいえ「 選択と集中」を決めて、「戦略」を決めたことで、競争に「勝てる」ことが決まるわけじゃない。たんに考える順番であって、そこから先は「戦術」と「作戦」が重要になってくる。がゆえに、考える順番は大切にしなきゃね、ってことでしかない。
あと、「 選択と集中」の話ができるは中小規模の組織がほとんどだと思うんですよね。大手は売れているものを模倣すれば経済規模の論理で、大きく展開できちゃうものだし。中小規模の企業であるほど、「なにをやらないか」をしっかり見極めて、事業展開をした方がいいと思います。大組織だと、がけっぷちに追い込まれた会社くらいしか、できないんじゃないかなぁ。いま多くの会社は「多角化」に舵をきっていますしね。
中小は 選択と集中の決断をおこなったうえで、参入障壁を明確にして、各個撃破による一点突破をおこなう。そして点を拡げていくことで、市場を獲得していくのがいいと思うんだよね。あとはスピードの問題。ニッチマーケットで戦うってことに近いのかもしれないけれど。とにかく「 選択と集中」をとことん考え続けるのが、戦略を考えることにもなるはずなんです。
ついつい「やることを選ぶ」という議論になると、心情的に「これもやりつつ、『こっちにも取り組む』」選択をついしてしまう。だから「やらないことを決めよう」という進め方のほうが、適しているのかもしれないですね。
社会環境や経済環境、競合大手の行動を自分たちではコントロールできない。だけど自社のすくないリソースをどこに集中させて、一転突破を図るのかということはコントロールしやすい。そこで経営資源を分散させるのは実にもったいない話だよね。この手の話は、いつもどっかで話したり書いたりしてきたんだけど、わが身を振りかえると「これもやりつつ、『こっちにも取り組む』」ことをやってしまうことが多くって。
まぁいまはそれを理性的に止めてくれる人がいるからいいんだけど。